住宅性能とは

太陽光パネルは設置すべき?

昨今、電気代上昇の影響や環境配慮の観点などから太陽光発電の必要有無について活発な議論がなされています。2022年12月には、東京都で太陽光パネルの設置義務化の条例が可決され話題となりました。

太陽光で発電した電力を国が買い取る「固定価格買取制度(FIT制度)」が2009年に開始されて以来、従来の買電単価より高い固定価格で買い取るという政策がこれまで推進されてきました。

したがって、少し前までは太陽光パネルは資金計画に余裕がある方が設置し、発電した電力を売ってお得に暮らすというようなものでした。しかしながら近年は、「太陽光パネルは設置しないと誰もが損をする」とまで言われるようになっています。
理由として最も大きなものは、電気代の高騰です。今、世界では電気代は年あたり3%上昇していくと言われています。現に2023年には一部を除く電力会社各社が電気代の値上げを経産省に申請しました。それもおよそ3割ほどの値上げ幅です(各社で差はありますが)。
皆さんが普段電力会社に支払っている電気代の中に「再エネ発電賦課金」という項目があるのをご存知でしょうか。これは、太陽光などの再生可能エネルギーで発電された電力を買い取るために電気代に対して一定割合のお金を徴収しているものです。そして、この単価は政府の予測を上回るペースで上昇しています。
このような事実から、もはや今後は太陽光パネルの設置が必須となりつつあると言えます。

「売電価格が下がっているから、もう得をする制度ではなくなった」という意見もあります。
確かにFIT(買い取り)制度が始まった2009年の買取価格は48円/kWh、それが2023年には16円/kWhと下がっているのは事実です。さらに、固定買取価格は10年間維持されますが、11年後以降は売電価格がさらに下がってしまうかもしれません。ですが、電気代の上昇が家計に与える打撃の方がはるかに大きく、少し前までは「売るために発電」していたのが、今では「自家消費のために発電」をするという発想になっています(プラス、余った電力を売ります)。
自家消費の例としては、お昼の発電をそのまま使う、おひさまエコキュートを設置しお湯の沸き上げに使う、EVへの充電などが挙げられます。また、今ではFIT制度が始まった頃よりも太陽光パネルの設置価格は安くなっていますので、2023年時点で初期投資の回収は10年以内にできると言われています(地域差あり)。

以下の表は太陽光パネルを設置していない家と、太陽光パネルを6kW設置している家の光熱費と負担額を簡単にシミュレーションし比較したものです。
(太陽光1kWhあたりの年間発電量は東京都平均の1,258kWhとする)

比較をすると、月々約1万4千円の差となります。年間で約16万4千円です。10年間で約164万円。設置価格は条件によりますが、仮に太陽光パネル6kWの設置価格が150万円だとすると約9年で回収できる計算になります。FIT制度終了後の11年目以降は売電価格の下落分差額分だけ計算を変える必要がありますが、それでも得をし続けることになります。
しかも、このシミュレーションは電気代単価が10年間変わらないという前提でのものです。実質その前提はあり得ないので、設置の有無でより差が開いてくることが考えられます。

上記のシミュレーションはごく簡単な例なので、気になる方はこちらのサイト からご自身でシミュレーションしてみてください。

さらにお得にするポイントは、自家消費率を上げることです。売電価格が下がっていることや今後の電気代の上昇、さらに設置11年目以降のFIT制度終了後を見越すと、電気を売るメリットより買わないメリットの方が大きいと考えられます。
自家消費率を上げるには、おひさまエコキュートや蓄電池の設置、電気自動車(EV)の使用などが挙げられます。おひさまエコキュートの設置により、住宅で最も大きなエネルギーを消費する給湯に太陽光で発電した電力を使うことができます。
蓄電池を使うと、日中に太陽光パネルで発電した電力を貯めておき、それを太陽光発電ができない夜間に使うことで買電量を抑えることができます。EVは蓄電池の代わりになるのと、ガソリン代も節約することができます。
上記のシミュレーションでは発電量に対しての自家消費率を30%としていますが、これらの活用で比率を上げることができます。

今後確実に上がっていくと言われている電気代に対して、上記のような手法で太陽光発電の自家消費率を上げることは、未来をより経済的な暮らしにする大きな要素になります。また、蓄電池やEVは災害で停電した時にも非常用電源として活用することができるというメリットもあります(太陽光パネル自体も活用はできますが、雨や曇りで発電できない時は利用できません)。

それぞれに補助金なども活用できる場合もあるので、よりエコでお得な暮らしを実現したい方は検討してみてください。


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