地震に強い家とは
日本は地震大国だと言われます。
あまり考えたくないことですが、万が一大地震が起きてせっかく建てた家が倒壊したり、傾いたりしたら…その悲しさは計り知れません。そうなってしまわないよう、「耐震等級」という地震に対する建物の強度を表す指標も、住宅購入にあたっては気にしたいポイントです。
耐震等級は、「住宅の品質確保の促進等に関する法律」(品確法)に基づいて作られた住宅性能表示制度で定められています。建物の地震に対する強度によってランクが3段階に分かれており、その数字が大きければ大きいほど建物の耐震性能が高いことを表します。
各ランクの詳細は以下の通りです。
耐震等級の計算方法は、「壁量計算」と「許容応力度計算」の2種類があります。
「壁量計算」とは、建物にかかる地震力、風圧力に対して必要な壁量を満たしているかを確かめる計算方式です。梁や柱にかかる力は計算しないため非常に簡易的なものです。
「許容応力度計算」とは、専用ソフトを用いて壁量だけではなく梁や柱、接合部の全てにおいて安全を確認する計算方式です。
どちらの方法でも耐震等級は計算できますが、「許容応力度計算」の方が「壁量計算」よりも緻密な計算をする分、より安全性が担保されています。実際、「壁量計算」で耐震等級3を取得した建物でも、「構造計算」では耐震等級2と同等になる場合もあります。
したがって「長期優良住宅」の認定には、「壁量計算」で耐震等級3、「許容応力度計算」で耐震等級2以上が要件としてあります。
現在(2023年)、「許容応力度計算」は3階建以上の木造住宅と延床面積500㎡を超える2階建以下の木造住宅で義務付けられていますが、延床面積500㎡以下の2階建や平屋の木造住宅では義務ではありません。しかし、2025年4月からは「許容応力度計算」が義務付けられる2階建や平屋の木造住宅の延床面積が、300㎡を超えるものになるようルールが変わります。
今後さらに「許容応力度計算」が義務付けられる範囲が拡大される可能性もあるので、これから家を建てるには「壁量計算」よりも「許容応力度計算」でしっかり安心できるようにしておくと良いですね。
「木造より鉄骨造の方が地震に強そう」というイメージを抱く方もいるかもしれません。しかしそれはあくまでイメージで、耐震等級1の鉄骨造住宅もあれば、耐震等級3の木造住宅もあります。もちろん、地震が起こったときに強いのは後者です。
ちなみに、平成28(2016)年の熊本地震では震度7の地震が2回起き、被害を受けた地域に耐震等級3の木造建築物が16棟ありましたが、倒壊・大破したものはひとつもありませんでした。工法についても「この工法は耐震性が強い、逆にこの工法は弱い」などのことが言われたりしますが、耐震等級を判断基準にすれば間違いありませんし工法は関係ありません。
せっかく購入した家が万が一の時にも悲惨なことにならないよう、家を購入するときには「許容応力度計算」で耐震等級3を取得することをおすすめします。
耐震等級3を取得すればローンをお得なプランで組めたり、地震保険料が割引になったりするというメリットもあります。
また、「耐震等級3“相当”」と表現するものがあります。
これは、壁量計算や許容応力度計算をした結果を第三者機関に提出・申請せず、認定が得られていないものです。認定を得るには手間や費用がかかるため、そこまでして認定を得る必要がない場合には“相当”と表します。この場合でも許容応力度計算はきちんとしていれば、家の耐震強度には変わりありません。ただし、壁量計算だけを行い壁量が基準の1.5倍あるから耐震等級3“相当”としている、という場合は要注意です。壁量計算はあくまで簡易的なものだからです。
また、“相当”とする場合は、ローンの優遇措置や地震保険料の割引などが適応されません。このあたりのメリットを享受したい場合は、申請をし認定を得る必要があります。長期優良住宅への申請をする際も同様です。
地震大国日本において、家や家族の安全性を守ることは必須だという点から耐震等級3の取得を強くおすすめします。さらに言えば、2025年から「許容応力度計算」が義務付けられる木造住宅の範囲が広がることも見逃せないポイントです。
耐震等級3を取得したとしても「壁量計算」と「許容応力度計算」のどちらの方法で取得したかが、将来の安全性はもちろん資産価値の査定や評価に反映される可能性も十分に考えられます。このような点からも「許容応力度計算」で耐震等級3を取得することがベストな選択だと言えます。
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